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マナサロワール湖とカイラス南面

プラン(普蘭)を出発したトラックは、荷台に荷物とチベット人と私を満載して、でこぼこの道を北へ走った。荷物は箱に入ったビール(らしきもの)と、南京袋に詰まった得体の知れないごつごつしたもの、であった。それらが荷台に敷き詰められているので、人間はその荷物の上に乗るしかなく、座ると言っても座りづらく大変だった。条件がマシそうな前のほうは当然ながら地元の人によって占有されており、私のようなよそ者は乗せてもらえるだけ御の字で、後ろのほうに乗った。

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トラックは途中、道を逸れてマナサロワール湖に寄った。ここは聖なる湖であり、仏教徒であるチベット人たちにとっては、カイラスよりはいささか順位が下がるけれども、立派な巡礼地なのである。ここに至るまでの峠でも、風の馬を投げて祈ってきたのだが、ここでも石積みにタルチョーを取り付ける者あり、湖に何か流すものあり、で、にぎやかな一休みとなった。

カイラス巡礼の基点となるタルチェンに到着したのは、午後2時頃。この日は一日曇っており、カイラスはまったく見えなかった。
予定ではここで泊まるつもりだったが、招待所と値段の折り合いがつかず、テントを持っているので歩き出してしまった。村(と言っても定住している人はごく僅かだったと記憶している)の人に巡礼路を聞き、それらしきトレイルを西へ向かう。風が強く、小雪も舞いだしてビバーク。

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朝起きると、こんな風景が広がっていた。遠くかすんで見えるのは、ナムナニ峰か。かなり長時間降っていた雪だが、軽くて飛ばされてしまうためか、意外にも積もっていない。地面がうっすら白くなっている程度だった。
北、カイラスの方向を見上げるが、前方の山が邪魔したのか、あるいは曇っていたのだろうか、ここでは山を見ることはなかった。

さらに巡礼路を西へ歩き、やがて前方に尾根が立ちふさがった。たいした高さではないが、道はそこで明らかに北へと方向を変えるようだ。
尾根を向こう側からボン教徒の親子が越えてくる。仏教徒は右手にカイラスを見ながら回るが、ボン教徒はその反対に回るのだ。白い馬を連れた親子は、笑顔ですれ違っていった。
尾根には小さなストゥーパが立っていて、それを回り込んだとき、初めてカイラスを見た。正確には、西南西面、ということになるだろうか。

爆発的な感情が湧く、動く、といったことはなかったと思う。
ようやく、ようやく、たどり着いた地ではあったが、「キャー」とか「うれしーっ!」とか「やったー!」とか、そういった感情は抱かなかった。私は静かに、呆けていた、と思う。なつかしい、なつかしい人に会えたような、そんな感じ。ちょっと気恥ずかしいような。

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この日はもっと先まで行くこともできたが、昼前に歩くことをやめてしまった。だって先に進んだら、この南西面とはお別れだから。早く進んでしまったらもったいない。
チベット人なら1日、ゆっくりの人で2日、外国人なら2日半から3日、というのがカイラス一周の標準所要時間だが、別に誰に迷惑をかけるわけでなし、誰のスケジュールで動いているわけでなし、ゆっくりゆっくり行こうと決めた。
南西面直下のタルボチェというストゥーパのある場所にテントを張り、遊牧民が羊の群れを連れて歩くのを見たりしながら、午後いっぱい寝転んで過ごした。
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by himalaya3 | 2007-10-06 16:59 | 西北ネパール~カイラス1992
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